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Icebreaker
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日々のちょっとした絵の格納庫です。余計な話もたまにします。

No.32

Sandfall Interactive開発のゲーム、Clair Obscur: Expedition 33において、開発段階で生成AIを利用していたのにも関わらず、一切生成AIを使用していないと虚偽の報告をしていたため、The Indie Game AwardsでのGOTYを剥奪された。

心情的に開発段階だけならまだ「虚偽報告」という点だけを注視して他は目を瞑ってやりたくもなるところだが、発売後暫く生成AIの出力物がそのまま出されていたというのだからもう黒としか言いようがない。
人のものを盗み、そのまま販売した。データセットに使われた見ず知らずの人に対する人権侵害行為であり、プレイヤーに対する裏切り行為である。
ちなみにそのアセットは現在差し替えられているとのこと。

「予算もないインディーズはどうやってゲームを作ればいいんだ」的な声が散見されたが、答えは簡単だ。「資金を援助して貰うか、予算に見合ったゲームを作れ」。
お店はお金が無ければ物を売ってくれない。各セクションのクリエイターも、対価が無ければ物を作れない。その際、取るべき手段の中に「盗む」が、最初から当たり前のように入っているのが問題なのだ。

実家が小売業を営んでおり、父方の祖母の実家も小売業だった。そのため小さい頃からよく言われていた。「たった一円でもお金が足りなかったら、お店は物を売ってくれない。たった一円、されど一円」だと。
実家自体は割とゆるく、常連さんにはおまけをするし、それこそわずかに手持ちが足りないお客さんにも値引きして物を売っていた。だけどそれは実家がそういう方針だからに過ぎず、端から他者に譲歩を求めるのはおかしい。

アート制作もゲーム開発も「物を売る商売」である事に変わりない。他店や仕入れ先から盗んでくるのは当然言語道断だとして、虚偽表示も許されない。
私が子どもだった頃「キレる十代」などと言う言説が飛び交い、「どうして人を殺してはいけないのか」と問う子ども達が増えたと言われていた。この問いについても答えは簡単で「無条件で他人の権利を侵害し、コントロールしていい権利は誰にも無いから」だ。
同様に、他者であるお客さんをコントロールしていい権利もまた、誰にも無い。だからこそ、商売において必要なのは交渉技術だとか社交性以前に、誠実さであると私は思う。
お客さん達は「いい物」を求める以上に「安心安全である物」を求める。とりわけ、商品に興味が無いお客さんは尚更そうである。危険性が無いか、害は無いか、吟味して漸く手に取った商品をレジへ持って行ってくれる。
長期的な視点から考えると、安全で質の高い物を作り、安心感を持って貰う事が信頼に繋がり、売る側も買う側も幸せになれる。狭いパイだけを見て短期的な視点から物を売ろうとすると、大抵いつかしっぺ返しを食らう事になる。目先の利益だけ見た結果。生成AIをゲーム開発に利用する事というのは、そういう短期的な視点からの発想である。そしてその結果の一例が今回の件だと言えるのではなかろうか。
人を騙してもいい事なんて何もないよ。

呟き